仙台地方裁判所 昭和55年(わ)85号 判決 1980年6月20日
本籍
宮城県岩沼市中央一丁目一四一番地
住居
同県仙台市錦町一丁目四番五号チサンマンシヨン一一〇六号
歯科医師
清水宣彦
昭和一九年一月三一日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官小泉健出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役八月及び罰金七五〇万円に処する。
右罰金を完納できないときは金四万円を一日に換算した期間(端数は一日に換算する)被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、仙台市中央一丁目八番一九号東洋ビル九階に清水歯科の名称で歯科診療所を設け、歯科医療を営んでいるものであるが、所得税を免れようと企て、自由診療収入の一部を除外し、簿外の割引債券を購入するなどの方法により所得を秘匿したうえ
第一 昭和五一年一月一日から同年一二月三一日までの被告人の総所得金額は三七、〇七一、三一二円でこれに対する所得税額は一六、〇二七、九〇〇円であるのにかかわらず、昭和五二年三月一五日、同市上杉一丁目一番一号所在の所轄仙台北税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は一〇、五〇八、七二八円でこれに対する所得税額は一、八〇四、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税一四、二二三、四〇〇円を免れ
第二 昭和五二年一月一日から同年一二月三一日までの被告人の総所得金額は三六、六一九、七六五円でこれに対する所得税額は一五、五三六、三〇〇円であるのにかかわらず、昭和五三年三月一五日、前記仙台北税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は一八、四二六、五〇〇円でこれに対する所得税額は五、三九三、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税一〇、一四三、〇〇〇円を免れ
第三 昭和五三年一月一日から同年一二月三一日までの被告人の総所得金額は三七、〇六四、九五九円でこれに対する所得税額は一五、五〇五、二〇〇円であるのにかかわらず、昭和五四年三月一四日、前記仙台北税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は一九、九一三、九七一円でこれに対する所得税額は五、八八五、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税九、六一九、八〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判事全部の事実につき
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書
一 大蔵事務官作成の被告人に対する質問てん末書一三通
一 被告人作成の上申書四通
一 鈴木やよいの検察官に対する供述調書
一 検察事務官作成の電話録取書
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料と題する書面
一 大蔵事務官作成の銀行調査書類と題する書面二通
一 大蔵事務官作成の割引債調査書及び不明入出金調査書
一 大蔵事務官作成の預金等調査書
一 大蔵事務官作成のたな卸高調査書
一 大蔵事務官作成の貸借対照表の土地等の実際額調査書
一 大蔵事務官作成の仕入金額及び外注費等の調査書
一 大蔵事務官作成の借入金等調査書
一 大蔵事務官作成の措置法差額の調査書
一 大蔵事務官作成の診療収入除外額調査書
一 大蔵事務官作成の租税公課の納付状況調査書
一 大蔵事務官作成の領収済通知書謄本及び申告所得税の納付状況照会に対する回答と題する書面
一 羽金義久、佐々木広、増永勝成、鈴木忠(二通)作成の各上申書
一 清水やす子、鈴木忠共同作成名義の上申書
一 松本正夫、木島和子共同作成名義の上申書二通
一 押収してある給料支払明細書控二冊(昭和五五年押第五九号の八)
判示第一、第二の事実につき
一 大蔵事務官作成の給料賃金等調査書
判示第一の事実につき
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和五一年度分)
一 大蔵事務官作成の清水宣彦他二名の土地代金入金明細と題する書面
一 洋伸不動産株式会社作成の証明書
一 大蔵事務官作成の五一年分所得税の修正申告書謄本
一 押収してある五一年分所得税確定申告書一綴(前同押号の一)、五一年分所得税青色申告決算書一綴(前同押号の二)、借入金及び利子支払証明書一通(前同押号の七)
判示第二の事実につき
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和五二年度分)
一 大蔵事務官作成の村上幸子に対する質問てん末書
一 大蔵事務官作成の五二年分所得税の修正申告書謄本
一 押収してある五二年分所得税確定申告書一綴(前同押号の三)及び五二年分所得税青色申告決算書一綴(前同押号の四)
判示第三の事実につき
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和五三年度)
一 大蔵事務官作成の五三年分所得税の修正申告書謄本
一 押収してある五三年分所得税確定申告書一綴(前同押号の五)及び五三年分所得税青色申告決算書一綴(前同押号の六)
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するので、いずれも情状により懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役八月及び罰金七五〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは同法一八条により金四万円を一日に換算した期間(端数は一日に換算する)被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 北野俊光)